「こうっ・・・・っげほ、こほっ」
「おい。
 大丈夫か」
秀麗はイチョウの異臭を思い切り吸い込んでむせる。さらに異臭を吸い込む破目に陥る。
絳攸は秀麗の背を擦りながら木から離れようと秀麗を促す。
秀麗は涙目で首を横に振った。
「っけ・・・ほ。
 こほ・・・だ・・・大丈夫です」
「秀麗?」
「もう。大丈夫です。
 ありがとうございます」
真っ赤な顔で見上げる秀麗に絳攸はほっと息をつく。
「なら、いいが」
ぶっきらぼうな言葉でも秀麗を支える腕は優しくて。
秀麗は鮮やかに微笑んだ。
「銀杏、埋めましょう」
「・・・埋める?」
「はい!
 絳攸様は銀杏をどのように料理するのがお好きですか?
腕によりをかけて作っちゃいます」
絳攸様の為に、とは言わないで。
「・・・・ちょっと待て。
 埋める?」
「そうです。
 銀杏の実は埋めて果肉が土に解けた頃、殻を掘り起こすんです。
 それを乾燥させて殻を割った中身を食べるんですよ」
「そう・・・なのか?」
「ええ。
 こっちの分野は任せて下さい」
腕まくりして秀麗は答えた。
生活の知恵である。
「それで、絳攸様!
 何を作りましょう?
 野菜と炒めて餡をからめます?
 お饅頭にいれます?
 素揚げをして塩をふるだけでも美味しいですよね」
うきうきと目を輝かせる秀麗に絳攸は目元を緩ませる。
「なんでも。
 秀麗が作るものなら、全て旨いからな」
秀麗の顔にパッと朱がさした。
誉められた事に嬉しさを。
絳攸と会える約束に安堵する。
絳攸は秀麗から顔をそむけるとイチョウを振り仰ぐ。
どんなに互いを欲しても決して届かぬ距離。
それでも、実をなして主張しているように見える。
幸せだ、と。

抱える想いは静かに根を張る。


2007/12/07

・・・絳攸様。別人です。
でも、この方は無意識に恥ずかしい事をやってしまいそうで。
あ。『銀杏の取り扱い』はウロオボエです。違っていたらすみません。
同じネタ『雌雄異株』で逆裁も書く予定だったり。

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