「お客様?
 父様のお知り合い?
 ・・・っていうか、お茶は?夕飯は?」
秀麗は青くなる。
家事不能な父が一体どのようなおもてなしをしたというのか。
想像するに恐ろしい。
恐らく庖厨は既にスゴイ事になっているのだろう。
(・・・冗官になって良かったかも。暫くは掃除三昧だわ)
邵可はきょとんという顔をする。
その顔は別に何も変な事はしてないよ、と言っていて・・・。
秀麗は益々怖くなった。
「夕飯はコウ殿が作ってくれたよ。
 いや。見事な青椒肉絲。
 青椒肉絲と饅頭しか作れないと、苦笑いしていたけどね」
「・・・父様。
 お客様にお采させたの?」
「かわりに食後のお茶を淹れたから。
 喜んで二杯も召し上がってね。
 だからお湯が温かいんだ。
 ちょうどいい時に帰ってきたね」
邵可はおっとりと微笑む。
秀麗は目を見開いた。
“父茶”を二杯。
(・・・・ツワモノだわ)
その時、父娘の会話に耳を傾けていた静蘭が口をはさんだ。
「旦那様。
 お知り合い、なんですよね」
父茶を飲める人物はかなり限られてくる。
静蘭は顔をしかめた。
(コウ殿。どこかで聞いた名前なんだが)
邵可は邸の府庫に目をやった。
「ああ。
 ・・・とても付き合いの深い方だよ。
 今、コウ殿は急ぎの用があって調べ物をされている。
 徹夜になってしまうだろうから・・・。
 明日の朝、紹介しよう。
 それまでは邪魔をしないようにね。
 彼を見たらきっと驚くよ」
邵可は複雑な面持ちで言った。
府庫で書物に埋もれているだろう彼の顔がよぎる。
彼は言ったものだった。
――私の事はコウとお呼び下さい。
と。
未来から来た、という絳攸殿はあえて幼少の名前を持ち出した。
(確かに区別が必要なんだが・・・・)
邵可は違和感を覚えたものだった。
己を示す呼び名。
普通、少し時間をかけて考えるものではないだろうか。
絳攸殿の言葉はまるで“初めから決まっていた”ようだったのだ。
思い過ごしにしては邵可の勘に触れすぎていた。
「・・・さま?父様?」
邵可ははっとした。
どうやら思考に集中しすぎていたらしい。
「ああ、ごめん。
 ちょっとボンヤリしてしまったね。
 さあ、お茶を淹れようね」
秀麗は何処となく様子のおかしい父を見つめ・・・溜息をついた。
結局ソコに戻るのか、と。
後ろでは静蘭が同じように苦虫を噛み締めたような顔をしていた。
・何故“父茶”で一話分ひっぱられたのか。
 長すぎです。
 予定外です。
 ラブ〜までいけなかったです。
 ウメは狼さんになってしまいましたよ。
 チキショウめ。
 恐るべし父茶・・・・。(20080215)
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